こんにちは。星の森ファミリー歯科、歯科医師の伊東です。
歯を失った際の治療法として「インプラント」を耳にする機会が増えましたが、「何歳までインプラント治療を受けられるのだろう?」「そもそも年齢制限ってあるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
また、実際にインプラント治療を受けている人が何歳くらいなのか、その年齢層も気になるところです。
この記事では、インプラントの年齢制限に関する疑問や、何歳から何歳まで治療が可能なのか、そして何歳で治療を受ける人が多いのかについて解説していきます。
目次
■そもそもインプラント治療とは?
まず、インプラント治療がどのようなものか、基本的なところから確認しましょう。
インプラント治療は、歯が抜けた部分のあごの骨にチタン製のネジのような形をした人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯(上部構造)を装着する治療法です。ご自身の歯のようにしっかりと噛むことができ、見た目の自然さも回復できます。
■インプラント治療は何歳から可能?
インプラント治療は、あごの骨に人工歯根を埋め込み、それが骨としっかりと結合することで機能します。そのため、あごの骨の成長が完了する18歳以降が対象です。
もし、あごの骨がまだ成長している段階でインプラントを埋め込んでしまうと、成長することでインプラントの位置がずれたり、インプラントや周囲の組織に予期せぬ力が加わり、安定性を損なう可能性があります。
このようなリスクを避けるため、インプラント治療は原則としてあごの骨の成長がほぼ完了してから行うのが一般的な考え方です。
ただし、「18歳になったら絶対にインプラントができる」というわけではありません。レントゲン写真やCT撮影を用いて判断します。
■インプラント治療は何歳まで可能?
結論からお伝えすると、インプラント治療に年齢の上限は設けられていません。つまり、「〇歳になったらもう受けられない」という明確な線引きはないのです。実際に、80代や90代の方でもインプラント治療を受け、食事や会話を楽しんでいらっしゃる方はたくさんいます。
重要なのは、年齢そのものよりもご自身の健康状態や口腔内の状態です。高齢であっても以下の点が良好であればインプラント治療を受けられる可能性は十分にあります。
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・外科手術に耐えられる体力があり、糖尿病や高血圧、骨粗しょう症などの持病が良好にコントロールされていること。
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・必要に応じて主治医と連携できること。
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・インプラントを埋め込むために十分な量と質の骨があること。または、骨造成(骨を増やす処置)などの追加処置が可能であること。
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・治療後のメンテナンスが可能であること。
■インプラント治療を受ける人が最も多い年齢層
歯科医院での実感や一般的な傾向として、インプラント治療を受ける方の中心となる年齢層、いわゆるボリュームゾーンは40代から80代と言われています。
※厚生労働省「歯科疾患実態調査」
この時期は加齢に伴い、長年使ってきた歯が弱くなったり、歯周病やむし歯が進行して抜歯に至ったりするケースが増えてくる時期です。失った歯の機能をしっかりと回復させたいというニーズが高まります。
また、定年退職などを機にご自身の時間や経済的な余裕ができ、これまで後回しにしがちだったお口の健康の自己投資として、インプラント治療を選択される方もいらっしゃいます。
もちろん、これはあくまで一般的な傾向です。事故で歯を失った場合や先天的に歯が欠損している場合、あるいは若くして重度のむし歯や歯周病で抜歯となった場合にインプラントを選ぶ方もいます。
■インプラントの年齢に関するよくある質問(Q&A)
ここでは、インプラントの年齢制限に関して、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。
◎Q1. 若いときにインプラントを入れると、将来問題が起きる?
20代や30代にインプラント治療を受けること自体が、将来的に必ず問題を引き起こすわけではありません。ただし、若い時期に入れるということは、インプラントと付き合う期間が長くなることを意味します。
インプラント自体はむし歯になりませんが、周囲の歯ぐきは「インプラント周囲炎」という歯周病に似た病気になるリスクがあるため、毎日の歯磨きと歯科医院での定期的なメンテナンスを根気強く続ける意識が重要になります。
◎Q2. 親が高齢でインプラントを希望しているが、気をつけることは?
ご高齢の親御さんがインプラントを希望される場合、年齢そのものよりも、以下の点に注意して、歯科医師とよく相談することが重要です。
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・全身の健康状態
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・お口の中の状態
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・手術への耐性と理解度
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・治療後の管理能力
ご家族の理解とサポートは、高齢者のインプラント治療において大きな力になります。通院の付き添いやケアの補助など、どのようなサポートが可能か、事前に話し合っておくと良いでしょう。
◎Q3. 年齢によってインプラントの費用は変わる?
基本的に年齢そのものがインプラント治療の費用を直接的に大きく変動させる要因にはなりません。インプラント治療の費用は、主に以下の要素で決まります。
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・検査・診断費
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・使用するインプラントの種類・メーカー
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・人工歯の材質
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・手術の難易度
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・骨造成などの追加処置の有無
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・治療を行う歯科医院の方針
正確な費用を知るためには、精密な検査診断を受けて見積もりを出してもらいましょう。
■インプラントの年齢について不安な方は、まずは歯科医師にご相談ください
インプラント治療には、あごの成長が関わるため下限の目安があり、また上限は医学的にはないものの、全身の健康状態が重要になることがお分かりいただけたかと思います。
しかし、これらの情報はあくまで一般的な目安であり、最終的にインプラント治療があなたに適しているかどうかは状況によって異なります。「自分はもう高齢だから無理だろう」「まだ若いから心配だ」など、年齢に関する不安から、治療の選択肢を狭めてしまうのはもったいないことです。
インターネットの情報や周りの人の話だけで判断するのではなく、インプラントと年齢に関して少しでも疑問や不安があれば、まずは歯科医師に直接相談することをおすすめします。