こんにちは。
星の森ファミリー歯科、歯科医師の伊東です。
再生療法は、歯周病によって溶けてしまった歯を支える骨(歯槽骨)や組織を再生させ、抜歯の危機にある歯を救うための治療法です。
しかし、誰でも受けられるわけではなく、費用や期間がかかるなどのデメリットも存在します。
今回は、再生療法について知っておくべきメリット・デメリットを解説します。
目次
■そもそも再生療法とは?
再生療法とは、歯周病によって溶けてしまった歯槽骨(しそうこつ:歯を支える骨)や組織を再生させる治療法です。
歯周病は進行すると、歯槽骨や歯根膜などの周囲の組織まで溶かしてしまいます。歯は土台を失ってグラグラになり、最終的には自然に抜け落ちてしまうのです。
歯周病治療は、病気の進行を食い止めることが主な目的でしたが、一度失った骨を元に戻すことは困難でした。
再生療法は、失われた土台を積極的に「作り直す」ことで、抜歯の危機にある歯を救い、その寿命を延ばすことを目指せる治療法です。
■最初に知っておきたい歯科再生療法の5つのデメリット
再生療法は魅力的な治療ですが、決断する前に知っておくべきデメリットがあります。
◎誰でも受けられるわけではない
まず、歯周組織再生療法は、残念ながら誰もが受けられる治療法ではありません。歯周病の進行状態や骨の欠損形態によっては、再生療法を行っても十分な効果が期待できないケースもあります。
歯を支える骨が垂直的に深く溶けている「垂直性骨欠損」という状態は、再生療法の良い適応症です。一方で、歯列全体で骨が水平的にじわじわと下がってしまった「水平性骨欠損」の場合、効果的な再生は難しいとされています。
◎骨が再生するまで時間がかかる
再生療法は、手術をしたらすぐに骨が元通りになるわけではなく、効果を実感するまでには長い時間が必要です。
そのため、変化が確認できるようになるのは、早くても手術から3〜6ヶ月後です。最終的に骨が安定し、治療が成功したと判断できるまでには、1年以上かかることも珍しくありません。
◎自由診療は費用が高額になる場合がある
使用する薬剤や術式によっては保険が適用されず、自由診療となって費用が高額になる場合があります。
目安は、治療する歯の本数や骨の欠損の大きさによって異なりますが、1つの部位あたり5万~15万円程度が相場です。
一方で、「リグロス」という薬剤を用いた治療は、一定の条件を満たせば保険適用となりますが、それでも通常の歯周病治療に比べると自己負担額は高くなる傾向にあります。
◎完全に元通りになるわけではなく、再生の程度には個人差がある
再生療法を受けたからといって、失われた骨が100%元通りに再生するわけではありません。
骨が再生する力には個人差があり、患者さまのお口の環境、全身の健康状態、生活習慣などが絡み合って結果を左右するからです。
特に、喫煙をされている方や血糖値のコントロールが良くない糖尿病の方などは、体の治癒能力が低いため、再生の程度が低くなる場合があります。
したがって、「治療さえすれば完全に治る」と過度な期待をするのではなく、現状よりも状態を改善させ、歯の寿命を延ばすための治療法だと理解しておくことが大切です。
◎治療後のメンテナンスが必須。怠ると後戻りの可能性も
再生療法が無事に成功しても、その後のメンテナンスを怠れば、再び歯周病が進行して後戻りしてしまうリスクがあります。
そもそも歯周病は、お口の中の細菌が原因で起こる感染症であり、日々の生活習慣が大きく関わる「生活習慣病」の一面を持っています。
せっかく手術で再生した組織も、その後の歯磨きが不十分だったり、定期的なクリーニングをさぼったりすれば、細菌が再び繁殖し、また骨を溶かし始めてしまうのです。
■デメリットを理解した上で考えるべき再生療法のメリット
ここまでデメリットを詳しく見てきましたが、もちろん、それらを乗り越えてでも手に入れたいメリットがあります。
◎抜歯を回避し、大切な歯の寿命を延ばせる
再生療法の最大のメリットは、「もう抜くしかない」と診断された歯でさえ、抜かずに残せる可能性が生まれることです。
他の医院で抜歯と宣告された歯があったとしても、再生療法によって骨が数ミリでも回復すれば、歯の揺れが収まることも珍しくありません。
そこからさらに10年、20年と使い続けられるケースもあります。
◎自分の歯でしっかり噛める喜びを取り戻せる
歯がグラグラしていると、硬いものが怖くて噛めない、繊維質の野菜が歯に挟まって不快、といったように食事そのものがストレスになってしまいます。
再生療法で歯の土台が安定し噛む力が回復すれば、食べたいものを自由に楽しめるようになります。
◎将来のインプラントや入れ歯にかかる費用・負担を減らせる
もし歯を抜歯した場合、失った機能を補うためにはインプラント、ブリッジ、入れ歯といった別の治療が必要になります。
これらの治療も決して安価ではなく、特にインプラントは1本あたり30万〜50万円ほどの高額な費用がかかるのが一般的です。さらに、インプラントも外科手術が必要ですし、その後のメンテナンスも欠かせません。
【再生療法は歯の寿命を延ばすための治療法です】
再生療法は、歯周病で溶けてしまった骨や組織を再生させることで、本来であれば抜歯と診断された歯の寿命を延ばせる可能性がある治療法です。
しかし、再生療法にはいくつかのハードルがあります。ですが、「失うはずだった自分の歯を残せる」ことは、何物にも代えがたいものでしょう。
もし今、あなたが歯周病に悩み、この治療法に少しでも可能性を感じているのであれば、当院にご相談ください。