こんにちは。 星の森ファミリー歯科、歯科医師の伊東です。
「アクセサリーで肌がかぶれたことがあるから、インプラントは怖い」
「インプラントに使われるチタンって、本当に安全なの?」
このような不安はありませんか?
結論から言うと、金属アレルギーをお持ちの方でも、インプラント治療を諦める必要はありません。インプラントの多くで使われている「チタン」という素材は、アレルギー反応をほとんど起こさない、身体に馴染みやすい金属だからです。
しかし、不安を抱えたまま治療に進むのは避けたいですよね。そこで本記事では、なぜチタンがインプラントの素材として用いられているのか、金属アレルギーで起こりうる症状、そして治療前に不安を解消するためのアレルギー検査などについて解説します。
目次
■金属アレルギーでもインプラント治療は諦めないで!
結論から言うと、金属アレルギーをお持ちの方でも、インプラント治療を諦める必要はありません。なぜなら、「正しい知識を持つこと」「治療前に検査をすること」「自分に合った素材を選ぶこと」という3つのポイントを押さえることで、アレルギーのリスクを低くできるからです。
インプラントに使われるチタンは、アクセサリーの金属とは性質が異なります。さらに、万が一に備えてアレルギー検査を受けたり、金属を一切使わない「ジルコニアインプラント」を選んだりすることも可能です。
■インプラントのほとんどが「チタン」製である理由
現在、世界中で行われているインプラント治療のほとんどで、「チタン」という金属が使われています。これほどまでにチタンが広く採用されているのは、他の金属にはない、インプラントに適した2つの優れた性質を持っているからです。
◎理由①:骨と結合する「生体親和性」が高い
チタンが選ばれる理由は、人間の体によく馴染む「生体親和性」が高いからです。チタンは体内で異物として認識されにくいため、拒絶反応やアレルギー反応をほとんど起こしません。実は、骨折治療で骨を固定するプレートや人工関節にもチタンが使われています。
また、骨の細胞がチタンの表面に自然と集まり、結合する「オッセオインテグレーション」という現象で、インプラントが自分の歯のようにガタつくことなく、しっかり噛めるようになるのです。
◎理由②:表面の「不動態皮膜」が金属イオンの溶け出しを防ぐ
チタンが金属アレルギーを起こしにくい理由の一つには、表面を覆う特殊な膜にあります。チタンは酸素に触れると、瞬時に「不動態皮膜(ふどうたいひまく)」という、非常に薄い膜を表面に作ります。
この膜がバリアとなり、アレルギーの原因となる金属イオンが、唾液などによって溶け出すのを防いでくれるのです。
汗でネックレスが触れる部分がかぶれるのは、汗によって金属が溶け出し、イオン化した金属が体内に侵入してアレルギー反応を起こすためです。
不動態皮膜は、傷がついてもすぐに再生する自己修復機能を持っています。そのため、お口の中という過酷な環境でも、金属イオンの溶出をブロックし続けているのです。
■金属アレルギーで起こりうる症状
インプラント治療で金属アレルギーを発症した場合、お口の中だけでなく全身にさまざまな症状が現れることがあります。ここでは、金属アレルギーで起こる可能性がある症状を見ていきましょう。
◎口の中に現れる症状
金属アレルギーの症状は、まず金属が直接触れているお口の中に現れることが多いです。唾液によって溶け出した金属イオンが口の粘膜に直接影響を与えるため、炎症などの反応が起こりやすくなります。
「なかなか治らない口内炎や舌の痛み」「口の中がヒリヒリ、ピリピリする」「食べ物の味が分かりにくくなる(味覚異常)」といった症状がみられます。また、インプラントを埋め込んだ周囲の歯ぐきが、原因不明に赤く腫れ続けることもあります。
◎全身に現れる症状
お口の中の金属アレルギーは、一見関係ないと思われる全身の皮膚トラブルとして現れることも少なくありません。金属イオンが血流に乗って全身に運ばれ、汗として皮膚から排出される際に、皮膚炎などを引き起こすと考えられています。
代表的な症状が、手のひらや足の裏に水ぶくれや膿が繰り返しできる「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」です。その他にも、かゆみや湿疹、アトピー性皮膚炎の悪化などとして現れることがあります。
■金属アレルギーが起こるのはインプラントが原因?
インプラント治療後に気になる症状が現れると、「もしかしてインプラントが原因?」と不安に思われるかもしれません。
しかし、その不調の原因は、新しく入れたインプラントではなく、以前からお口の中にある銀歯などの詰め物や被せ物というケースも少なくありません。保険診療で一般的に使われる銀歯には、パラジウム合金などが含まれており、これらが体質によってはアレルギー反応を引き起こすことがあるのです。
実際に、長年悩まされていた原因不明の皮膚トラブルが、歯科で銀歯をアレルギー反応の出にくいセラミックなどに替えたことで改善に向かう事例もあります。
気になる症状があれば、皮膚科と歯科の両方で相談してみることをおすすめします。
■治療前に不安をゼロに!金属アレルギーの検査方法・タイミング
インプラント治療に対する漠然とした不安を解消するためには、治療を始める前に皮膚科で行う「パッチテスト」を行うのが効果的です。
これは、インプラントに使われるチタンなど、アレルギーが疑われる金属の試薬を染み込ませたシールを背中や腕に貼り、48時間後、72時間後に皮膚が赤くなったり腫れたりしないか反応を見る検査です。
ただし、いきなり自分で皮膚科を探すのではなく、まずはインプラント治療を検討している歯科医院で「金属アレルギーが心配だ」と伝えましょう。
場合によっては、提携している皮膚科を紹介してくれるなど、検査までの流れをスムーズに案内してくれることがあります。
■正しい知識と事前の準備で、安心してインプラント治療を受けましょう
インプラントの素材として主流の「チタン」は、骨と結合する性質を持ち、表面の膜が金属イオンの溶け出しを防ぐため、アレルギー反応が極めて起こりにくい金属です。このため、多くの方が問題なく治療を受けられます。
しかし、過去のアレルギー経験から不安が残る方もいるでしょう。その場合は、治療前に皮膚科で「パッチテスト」を受け、ご自身がチタンにアレルギーがあるかを確認しましょう。
インプラント治療で後悔しないためには、ご自身の不安や疑問を率直に歯科医師へ伝えることが大切です。一人で悩まず、まずは歯科医師に相談し、納得のいく治療法を一緒に見つけていきましょう。