
こんにちは。星の森ファミリー歯科、歯科医師の伊東です。
「あれ、なんだか歯が長くなった気がする」
「まだ20代なのに、どうして歯茎が下がるの?」
このようなお悩みはありませんか?
その歯茎の下がりは「歯肉退縮」と呼ばれ、実は20代・30代の若い世代にもある悩みです。
力の強すぎる歯磨きや初期の歯周病が原因であることが多く、放置しても自力で元に戻ることはありません。
そこで本記事では、歯茎が下がる原因から、歯科医院での治療法、失った歯茎の回復が期待できる「歯周組織再生療法」や予防法まで解説します。
目次
■下がった歯茎は自力で戻すのが難しい
一度下がってしまった歯茎をマッサージや歯磨き粉などで自力で元通りに戻すことは難しいです。
歯茎の下がりは、歯茎の表面がすり減っただけでなく、その下にある歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまっているケースが多いからです。
しかし、自力で治すことはできなくても、歯科医院での適切な治療によって、これ以上症状が進行するのを食い止めたり、失われた歯茎を回復させて見た目を改善したりすることは十分に可能です。
■なぜ歯茎が下がるの?20代・30代に多い原因
歯茎が下がるのは年配の方の悩みと思われがちですが、実は若い世代にも見られます。その原因は以下の通りです。
◎原因①:オーバーブラッシング
若い世代に多い歯茎下がりの原因の一つは、「オーバーブラッシング(力の強すぎる歯磨きのこと)」です。
清潔にしたいという思いが強いあまり、硬い歯ブラシでゴシゴシと力を入れて磨いてしまうと、歯茎は少しずつ削り取られるように下がっていってしまいます。
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歯ブラシの毛先が1ヶ月も経たずに、すぐ外側に開いてしまう
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歯磨き中に「シャカシャカ」と大きな音がしている
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磨いた後に、歯茎がヒリヒリすることがある
もし、一つでも当てはまるなら、あなたの歯磨きは力が強すぎるかもしれません。
◎原因②:歯周病の初期症状
「歯周病なんて、まだまだ先の話」と思っていませんか?実は、歯周病は20代から始まっているケースも少なくありません。
歯周病は、歯と歯茎の間に溜まったプラーク(歯垢)の中の細菌によって、歯茎に炎症が起き、最終的には歯を支える骨を溶かしてしまう病気です。骨が溶けることで、その上にある歯茎も一緒に下がってしまうことがあります。
初期の段階では痛みなどの自覚症状がほとんどなく、「歯磨きをすると時々血が出る」程度で見過ごされがちです。
◎原因③:歯並び・噛み合わせの問題や矯正治療の影響
歯並びや噛み合わせも、歯茎が下がる原因となり得ます。
例えば、一本だけ前に飛び出している歯は、歯ブラシが強く当たりやすかったり、噛むたびに過度な力がかかったりするため、その部分の歯茎が下がりやすくなります。
寝ている間に行う歯ぎしりは、無意識のうちに歯に強い力がかかり、歯茎にダメージを与えてしまうことも。
歯列矯正の治療中は、歯が動く過程で一時的に歯茎が下がってしまうことも珍しくありません。多くは治療の経過とともに改善しますが、注意深い観察が必要です。
■下がった歯茎を戻すための歯科治療
歯科医院では、症状の段階や原因に応じて様々な治療法を提案してくれます。
◎まずは進行を止める基本治療から
どんなに高度な治療を行うにしても、まず大前提として行うのが「歯周基本治療」です。
歯周病の原因となる歯石を専用の器具で徹底的に除去する「スケーリング」や、歯科衛生士による「歯磨き指導」が中心となります。
症状が軽度であれば、この基本治療をしっかり行い、定期的なメンテナンスを続けるだけで、歯茎の健康を維持できるケースも少なくありません。
◎失った歯茎を回復させる「歯周組織再生療法」
歯周組織再生療法は、エムドゲインやリグロスといった薬剤を使って、失われてしまった歯茎や歯を支える骨の再生を促す治療法です。
歯周病によって溶かされてしまった骨の部分に、これらの薬剤を塗ることで、歯が生えてくるときと同じような環境を作り出し、組織が再生するための足場を築きます。これにより、歯茎の位置が回復し、見た目の改善が期待できます。
すべてのケースで適応できるわけではありませんが、歯茎を自然な状態に戻すことを目指せる治療法として注目されています。
■これ以上歯茎を下げないためにできる予防法
これ以上歯茎を下げないためのセルフケアです。
歯磨きは歯茎を傷つけないように優しく行いましょう。歯ブラシは、鉛筆を持つように軽く握る「ペングリップ」で、毛先を歯と歯茎の境目に45度の角度でそっと当て、小刻みに優しく動かすのがポイントです。
また、ヘッドは奥歯まで届きやすい小さめのものを選びましょう。毛の硬さは「ふつう」か「やわらかめ」がおすすめです。
ただし、どんなに丁寧にセルフケアをしても、落としきれない汚れは必ずあります。3ヶ月~半年に一度は歯科医院でクリーニングを受け、お口の状態をチェックしてもらうことが大切です。
【20代の歯茎下がりはまずは歯科医師へ相談を】
歯茎が下がってしまうのは、良かれと思って行っている毎日の強い歯磨きや初期の歯周病が原因であることが多いです。
一度下がってしまった歯茎は、残念ながらマッサージや歯磨き粉で自力で元に戻すことはできません。
しかし、歯科医院で適切な治療を受けることで、進行を食い止めたり、失われた歯茎や骨を回復させる「歯周組織再生療法」といった治療を受けたりすることは可能です。
「まだ若いから大丈夫」と自己判断せず、少しでも気になったら早めに歯科医師へ相談しましょう。
